金城一樹のとある小説に、理科の男性教員が登場する。彼は主人公たちの通う落ちこぼれ男子校の教師なのだが、妻と結婚して二人暮らしだ。結婚して随分になるが、妻と仲良く寄り添っている写真を見て、主人公は、

『ラブラブですね』

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という。対して彼は、

『恥ずかしながら、ラブラブだ』

と答えるのだ。

読んだのはだいぶ前だが印象的なシーンで、今も記憶に残っている。これが単なる惚気だったら、すぐに忘れただろう。しかし彼の両親と奥さんの両親は、実はともに原爆被害者。そのことがあり、わざとではないが、彼ら夫婦は子供を作らなかった。だから今でも二人きりで、『ラブラブ』なのだ。



コリアンジャパニーズというバックボーンがそうさせるのか、金城一樹の作品は奔放だが繊細で、マイノリティや弱者への愛に満ちている。金城一樹は決して、マイノリティを『可哀想だ』という描き方はしない。この教師も原爆症者の子供に生まれて、妻と自分の子供はなく、落ちこぼれ男子校の教員で…という、社会的に見れば決して『成功した』人間ではない。しかしそれを憐れむでも蔑むでもなく、『だからどうした』というところが、彼の素敵な戦い方なのだ。

フィクションの例を引いたが、現実にも、子供のいる夫婦よりもいない夫婦の方が、新婚が過ぎた後のラブラブ度は高いように思う。子供がいると子供に気を取られて、お互いのことはおろそかになりがちだが、夫婦二人だけの場合は相手のことが良く見えるからだろう。

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あからさまにべた付くことだけが『ラブラブ』なのではない。

いくつになっても、お互いを気遣うことのできる夫婦は素敵だ。子供がいようがいまいが、そんな夫婦でありたいものだ。